沖で待つ

絲山秋子さんの「沖で待つ」「イッツオンリートーク」を読みました。結婚しない男の悩みは小説になりませんが、同様の女の心情は作品になるんだと思います。男の悩みはつまらんけど、女の心情は他人が読んだり、聞いたりしても興味深いということですかね。


沖で待つ (文春文庫)

沖で待つ (文春文庫)

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)

骸骨ビルの庭

宮本輝先生の「骸骨ビルの庭」を読みました。


戦後の経済的危機で親から捨てられた多くの子どもたちを育てた男の物語。性的虐待を育てた女の子に加えていたという汚名をぬぐおうとする動きが軸になって、大人になったかつての「子どもたち」が男について語るという構造になっています。


汚名は完全に晴れるようなことはなかったわけですが、骸骨ビルの閉鎖されていた部屋が開け放たれて、「子どもたち」の一人一人に「親」としての最後のメッセージが伝えられるシーンには、「自分ははたして子どもたちの親になろうとしているか」と思いました。人として大切な様々な事柄を読み取れる作品。最近の宮本輝先生の作品は「流転の海」シリーズがやはり代表作だと思いますが、これもまた流転の海と並べて語られるものだと思います。


骸骨ビルの庭(上)

骸骨ビルの庭(上)

骸骨ビルの庭(下)

骸骨ビルの庭(下)

死に神を葬れ


帯の推薦文は嘘っぱち。読み始めてそうそうだめだな、という感じ。えー編集は池袋ウエストゲートパークを意識していたのかしらん。


死神を葬れ (新潮文庫)

死神を葬れ (新潮文庫)

プリズン・トリック


序盤に期待を抱かされ、中盤に違和感を感じ、終盤で裏切られた感じ。選評が大変参考になります。その通り、だと思う。江戸川乱歩賞もあんまり乱発できないと思いますけど。


序盤の謎の設定でしかし、最後まで読まされました。そういう意味では成功かも。しかし読後感がよくない。


プリズン・トリック

プリズン・トリック

太陽を曳く馬


晴子情歌、新リア王、そして「太陽を曳く馬」と続いた三部作。ほとんど前2作の内容は覚えていません。


それだけ内容がわからなかったし、高村薫先生の意図するところが察することもできなかったわけですが、今回もそれに輪をかけて難解です。仏教哲学小説ですかね、これは。


合田雄一郎が登場するという意味では、期待していたわけですけど、ミステリー的要素はほとんどありません。こんなに合田さんが哲学的だったとは。


オウム真理教の現代的な意味づけ、については、面白かった。村上春樹1Q84のようなカルトの扱いではなく、オウムの発生から教義的なもの、そして変質というか結末は村上なんかよりはずっと参考になります。


それと世界を解体したあげくに、意味をなんごとにも見いだせなくなった21世紀の精神的荒廃ですか。

民主党の政策

総選挙で民主党過半数をとるような週刊誌報道が続いております。週刊誌は売れればまあ、OKなので、見出しはウソでもなんでもいいわけで、信憑性はあまりないわけなんですけど、それにしても民主党が政権とったらたいへんだなあ、と思うわけです。


民主党の政策は形としてまず見えているのは「大きな政府」です。


小さな政府は減税によって、消費を刺激しようとしますが、民主党マニフェストには「減税」があるのは、暫税率の廃止くらいでしょうか。個人に対する減税はないんじゃないかなあ。


代わりに盛り込まれているのは、子ども手当です。これはまあキャッシュバックみたいなもので、政府・自治体側の手間はかかるよね。公務員の手間が維持されて、しかもありがたや、と納めた税金の一部をお金で受け取るという形です。ばかばかしいから、その分減税してくれ、という感じ。バカにしてませんかね。


「高速道路の無料化」というのもナンセンスな政策です。道路はメンテナンスする限りはお金がかかるわけで、無料化をずっとしつづけようとすれば、永遠に現状の道路のメンテナンス費用を払い続けなければなりません。税金で。縮小しようというメカニズムは働きますか、そこに。


むしろ巨大な国営道路公団が復活するイメージじゃないですかね、無料の看板のもとに、巨大な公的資金が投入され続ける。それは勘弁してほしいんじゃないの、国民は。


例えばJRを無料化する、という政策を掲げたとしましょう。みんな賛成、しかし、このためには国営のJRを維持するのには、巨額の税金が投入されますよ。国が収入を保証してくれるから、無駄を削るとか経営努力とかしないで、国から無料化にかかった費用を受け取り続けるだけ。そういうことを想像したら、高速道路の無料に賛成できますかね。ばかな道路公団には、市場原理という足かせをかけておいたほうがいいんじゃないのかね。


自民党の政策のほうが合理性があるわ、少なくても小さな政府という形は維持しようとしているし。麻生太郎に投票するという形をとるのは嫌だけど。

サマーウォーズ


見ました。けどやはり、2作目の壁というんでしょうか。細田守監督にとっては試練だったと思います。


日本テレビ、とかいろいろスポンサーが付いた結果、映像を充実させようというところが、よくあることですが、CGに走ってしまいました。やはり難しいね、いろいろと。

メインキャラの小磯健二くんの成長物語とかおもいきや、初めから特に成長の余地なし。とくに苦難に遭うわけでもない。ああー


夏希先輩にしても、特に成長するわけでもなく、ただ恋する乙女という感じ。これでは物語の盛り上がりというのもどうよ。


ばあちゃんのすごさと、大家族のありがたさを言い表したかったんでしょうが、ばあちゃんは偉いひとたちに電話しているだけです。最後の最後で切り札的に使えばいいのに、いきなり、総理に電話ですから。ためもなくもないから、盛り上がりようがない。


細田守監督には試練だね。