骸骨ビルの庭

宮本輝先生の「骸骨ビルの庭」を読みました。


戦後の経済的危機で親から捨てられた多くの子どもたちを育てた男の物語。性的虐待を育てた女の子に加えていたという汚名をぬぐおうとする動きが軸になって、大人になったかつての「子どもたち」が男について語るという構造になっています。


汚名は完全に晴れるようなことはなかったわけですが、骸骨ビルの閉鎖されていた部屋が開け放たれて、「子どもたち」の一人一人に「親」としての最後のメッセージが伝えられるシーンには、「自分ははたして子どもたちの親になろうとしているか」と思いました。人として大切な様々な事柄を読み取れる作品。最近の宮本輝先生の作品は「流転の海」シリーズがやはり代表作だと思いますが、これもまた流転の海と並べて語られるものだと思います。


骸骨ビルの庭(上)

骸骨ビルの庭(上)

骸骨ビルの庭(下)

骸骨ビルの庭(下)