MISIAのすごいところ


アスリートでも、アーティストでも、超一流といわれる人は、集中して自分のパフォーマンスを発揮している時に、その感覚を独特の表現で語る時があります。


古くは、打撃の神様川上哲治が「ボールが止まって見えた」とかいったとかいわないとか。感覚的なことなので、そう多くはないかもしれません。


マンガの世界では、小山ゆう先生の「スプリンター」が好きでしたね。100メートル走の競技中にスプリンターたちが自分に流れる世界が変わって見えるという表現。結局のところ、そういう世界にはまっていった主人公のライバルたちは「神の領域」に近づいたために、なんらかの事故にまきこまれていくんですけど…最後の一コマの続きは未だに読みたい気にさせられる名作でした。


もうひとつの天才マンガは、曽田正人先生の「昴」だったと思うんですよ。あれもなんともいえない天才の周りに流れる感覚を表現しておりました。


で、MISIAですが、2月26日に新木場のツアー打ち上げライブで面白いことをいっておりましたね。「To Be In Love」を歌い終えてからの会話で、たぶんこんな感じだっと思うんですけど。


「あー涙がでちゃった。アルバムのEighth Worldは、前のアルバムのAscensionから1年も経たずに出したアルバムだったんですけど、ライブのリハーサルと歌の制作がいっしょに平行してすすめていったんですね。そのなかでもTo Be In Loveは、作っていく中で、どんどん歌詞がでてきた。歌っている中で小さな穴にすぱっと入り込むような… 普通はこのくらいの穴の大きさなんですけど、もっと小さい穴にすばっと入り込めるという感じ。ズバっと」


いやあ、そうだったんだ、MISIAもやはり、天才の眷属だわ。たぶん歌っているときは、自分の身体の状態とか、のどのふるえとか、手に取るようにわかっているんだろうな。時間とかもゆっくり流れているに違いないわ。とか思いました。


MISIAがライブでいう歌うのは、だいたい14-15曲くらいが多いくらいですけど、密度が濃いので、聞いているほうもけっこう集中させられる時があります。もうすごいときは、バンバン、ステージから圧力がかかる感じ。しかも固まりで。そういうライブがあるから、またすぐ会場で聞きたくなってしまうんだと思います。「つつみ込むように…」から10年。そしてまた10年だって。昨日のライブでの話を聞いて、ああMISIAは、いつまでも歌いつづけてくれるんだな、と思いました。聞き手のために。そしてなによりMISIA自身のために。いやはや、すごいわ。