楽園


宮部みゆき先生の「楽園」を読みました。


模倣犯」でピースを“はめた”フリーライターの前畑滋子が主人公。「模倣犯」に感心させられた読者としては、それだけで読まねばなるまい、と思いましたが、「模倣犯」ほどの密度も構成もなく、ちょっと期待はずれでした。


前半のサイコメトラーの謎解きが長すぎ。後半にかけて、あらたな犯罪が浮上してきますが、なんかこれはこれでとってつけたような印象がぬぐえず。


後書きを読むと、作者のモチーフとして、「家の下に殺された姉の死体が知らないうちに埋められている」というイメージがまずあって、小説として成立させたかったんだそうだ。これだけならば、上下巻はいらないかな。


宮部みゆき先生の作品は、当たりはずれが激しくて、ちょっと取捨選択に困りますね。


「レベル7」「火車」はストーリーテラーとしての才能がキラキラしていますけど、「理由」「蒲生邸事件」あたりで、もうこれはダメだな、と。そうしたら「模倣犯」だからねえ。波がある過ぎるような気がします。「模倣犯」はいままた読み直していますが、これだけの密度の話を書いたのは並大抵のエネルギーではなく、なんか憑いていたとしか思えません。


産経新聞の連載小説というスタイルがよくなかったか。なんかだらだらしちゃっているんです。無駄な描写も多いし。


楽園 上

楽園 上

楽園 下

楽園 下


【おすすめ度 五つが満点】★★(模倣犯を読んだ当時の懐かしい気分になりたい人には★★★)