反転 闇社会の守護神と呼ばれて


元特捜部検事の田中森一さんの「反転」を読みました。

反転―闇社会の守護神と呼ばれて

反転―闇社会の守護神と呼ばれて


遅ればせながら、ではありますが、派手な新聞広告や高い評判に違わない作品でした。


文字通り、特捜部検事から、ヤクザやバブル紳士の法律アドバイザーに立場を反転させた田中さんの半生を描いたものです。山口組の元若頭の宅見組長や許永中との交流や仕事がらみ、事件がらみのエピソードも大変興味深いものでした。安倍晋三と高橋治則や、その父の安倍晋太郎山口組トップのつきあいなども書かれています。


しかし著者が最後に結論のようなことを書いているのが一番目をひきました。

この国は、エスタブリッシュメントアウトローの双方が見えない部分で絡み合い、動いている。彼らはどこか似ている。エスタブリッシュメントと呼ばれるトップ階層から、アウトローと呼ばれる裏社会の住人にいたるまでの付き合いのなかから、それを感じた。表と裏が一体となり、ことを運ぶその現場をこの目で何度も見てきた(終章 審判401ページから)


この見てきたことについて、田中森一さんは「日本という国に存在する、深く真っ黒い闇がそこにある」とだけ書いています。


表=政治家、大企業。裏=ヤクザ、成り上がりの経済ヤクザ。これが絡み合って動いているというのは、よく言われていますが、一冊の本を通じて、満載のエピソードで例証した作品はなかったでしょう。


で結局、エスタブリッシュメントやヤクザ以外の無力な庶民たちは、どうすればいいのかしらん。あくまで小市民的な生活の楽しみをみつけて生きていくことで満足しているような人たちは。


ごねるしかないね。だらだらと。なんかそう、小市民的な結論はそう。ぶつぶつ文句をいうとか。選挙でいやがらせするとか。まああんまり効果はないだろうけど、ぶつぶつ言いながら生きていくのもいいじゃない。