プーチニズム


10月7日に殺されたロシアのジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤさんの著書です。
プーチニズム 報道されないロシアの現実


エリツィンに代わってロシアの大統領となったプーチンは、エリツィンが手を着けていたロシア軍の軍紀粛正とはまったく逆方向の方策で、国をある意味まとめ上げた。それがチェチェンでの戦争だ。軍隊は、戦争を行っていれば、勲章も出せるし、昇進も早い。チェチェンでの戦争は、プーチンのいってみれば、軍に対する人気取りの政策。しかし、そのきわめて政治的な目的、しかも内政問題のために、チェチェンでは非人道的な殺戮が行われている。


次にプーチン政権とは、ロシア国内の天然資源開発を行う新興財閥と、その暴力装置である犯罪集団、さらに犯罪集団がワイロを送る警察などの上に支持基盤を置いている。ようするに、これでは、法の支配というものが行き渡らないのは、当然のことである。なんでもありの様相を呈しているのが、プーチン支配下のロシア。


その文脈で考えると、日本にとってサハリン2の約束反故というか、契約破棄みたいなものは、分からないでもない。これはワイロをしかるべき筋に通さなかったのではないか、というのがまず一つ。さらにロシアのルールでこれからは対外的な関係で物事は進めるぞ、という宣言だったのではないか、という感じがする。


国境警備隊による日本漁船の銃撃なんざ、ロシアの軍紀の乱れから考えると、序の口みたいなものなのかもしれない。


とまあ、いまのロシアを考えるには、とても参考になる本でした。ちょっとエピソードが詳しく書き込まれすぎていて、その部分はとばして読みましたけど。


こんな国が隣にあるんじゃ、日本もやはり不安ですね。佐藤優さんは日露の間のパイプが切れているから、こういう日露間の問題がいろいろと噴出しているというとらえ方をしていたましたが、はたしてどうか。