シャングリ・ラ


池上永一さんの「シャングリ・ラ」は途中で挫折しました。シャングリ・ラ


理由は、文章がヘタだから。構成があまり練られていないから。人物造形もいきあたりばったりだから。


舞台装置は、いいんですよ。舞台は、温暖化が進んだ近未来の地球。日本は、空中炭素固定技術とかいう先端技術を駆使して、アメリカに並ぶ超大国になっています。未来の製造業は、とにかく炭素を排出しないことが評価されています。経済も炭素をどのくらい削減できるかが大きなポイントになっていて、税金も炭素の排出量と連動しているので、右向いても炭素、左向いても炭素という感じ。そこで、日本は、東京を森林化し、得意の炭素技術を使って、高層都市アトラスを建設。だいたんに経済炭素を削減して繁栄を極める一方で、厳格な階級に国民を再編しています。主人公は、アトラスに住めない住民たち・反政府組織を率いる総統の女の子。対立するのは、アトラスに住む階級がトップの女の子…


と言う具合に整理すると、けっこう興味をひかれる方もいると思うんですが、話がなかなか見えてこない。アトラスの謎ってなによ、と言う前に、なんか場当たり的な構成に正しい読書頭が耐えられず。しかも、文章がヘタで、リズムが悪い。心理描写も本文で説明してしまって、なんか想像力がふくらまないぞ、というなんとも不思議な小説です。


もうちょっとよく構成とキャラクターを整理して書いたほうがいいんじゃないの。設定はなんとなく、面白そうなんだから。アニメーターの吉田健一さんのイラストが月刊ニュータイプ連載時代には、添えられていたようです。イラストは、吉田さんのウェブで見られます。そのくらいかな、以上。