自壊する帝国


佐藤優さんの「自壊する帝国」を読みました。
外務省に入省し、外交官となり、1991年の“クーデター”事件が失敗するまでのことを主に書いています。モスクワ時代の回顧録という形ですが、外交官の仕事を考える上で、非常に参考になります。自壊する帝国


佐藤さんは、同志社大学で神学を専門に学んだということですが、この神学という学問的なバックグラウンドがソ連に人脈を築いていくのに非常に結果として役立っています。共産党幹部にも、民主化を主張する運動家に対しても、神学・哲学は共通の話題だったわけです。


そして酒ですね。ロシアの会合での飲みっぷりは、ちょっと想像がつきません。ウォッカを2人で5-6本は飲むってえのは。ここまで飲まないと、ロシア人からは信頼されないみたいです。ロシア専門家は、すべからく酒に強い人をリクルートするべきですね、外務省は。


ロシアで出会った人物たちは、みな優れて魅力的でした。特に佐藤さんが日本で逮捕されるのを待つばかりだったなかで、届いたサーシャからの手紙は、回顧録のエンディングにぴったり。構成もうまく決まっています。あいだあいだで、けっこう時代が先にいったり、後にもどったりしたところはありますが。ちょっとこの人の思考力とかには、恐ろしいものを感じます。