帝都衛星軌道

帝都衛星軌道


これまでに島田荘司さんの作品をよんだことがないので、過去の作品との比較はできないし、作家としての力量は知りません。ただ、もう小説家として20年以上のキャリアがある先生なので、まあ、ある意味信用していたわけです。


見事に期待を裏切られました。本の帯に「正直言って、自信作です」ときっぱり言い切っているから、そうなんだろーと思ったんですけど。ひどいわ、こりゃ。よくもまあ、自信を持てるなあ、と思いましたね。「正直言って、駄作です」って言いたいよ。1890円は高かった。


構成がよくないです。単行本のなかに、帝都衛星軌道の前編と後編があって、前編が誘拐事件の顛末、そして後編が謎解きという構成なんですけど、謎というのがさほどの謎でもないんですよ。そして、前編と後編は、案外繰り返しになっているので、スピード感がまったくありません。


登場人物にも魅力がまったく感じられません。最初の書き出しだと、主人公は、警察の特殊班の刑事かと思っていました。しかし、途中から語りの視点が変わるんですね。さらにいうと、時折、描写に視点のぶれがあるように感じる表現もありました。素人以下ですね、このあたりは。


事実関係の記述にも難があります。「腸」のがん、なんかないよ。大腸がんならあるけど。校正してんのか、講談社


とまあ、これだけひどい作品もひさしぶりに読みました。しばらく仕事できないね、島田先生。どこに「自信」をもってんのかね。適当に書いてんじゃないよ。