糖尿病専門医にまかせなさい


今時、「まかせなさい」という医者も珍しい。


世の中の医療の流れとしては、
インフォームド・コンセント(説明と同意)が大事で、
患者を「患者さま」と呼べなんてことを経営コンサルタント
開業医に指導している時代なのである。糖尿病専門医にまかせなさい


しかし、この本を見ると、本当に治療は
「こういう専門医にまかせた」ほうがいいんだろうな、という気持ちになる。
それだけ、著者の糖尿病治療の経験が圧倒的に説得力をもって読者に迫ってくる。


著者は、26年にわたり、糖尿病の臨床を続けてきたという専門医。
東京・銀差のAGE内科クリニックの院長を務めている牧田善二医師。


本の帯に「『血糖値だけ下げればいい』は大誤解 !」とある。
ようするに、この本の主題はこれだ。
糖尿病に深い知識がなく、臨床経験も乏しい医者は、血糖値を下げることしか
治療としてやっていない、ということがいいたいようだ。


血糖値を下げただけではなぜいけないのか。
空腹時にはかる血糖値は、糖尿病か否かを診断する重要な血糖値であるが、
治療にあたって、医者がみるべきは、一日における血糖値の平均だ。
空腹時は、低くてOKだとしても、食事後にがーんと数値があがり、
数時間たっても、血糖値が下がらないのでは、かなりやばい状態だ。
これでは、空腹時血糖値が126以下とかであっても、
高血糖状態に血管はさらされていることになる。


また糖尿病は有効な治療をしておかないと、神経障害や網膜症、腎症を
引き起こすが、糖尿病合併症を防ぐことを十分に意識した治療を
専門医以外は行えていないのではないか、という旨のことを
牧田医師はいっている。


合併症の発症を防ぐには、血糖値ばかりではなくて、
様々な検査データを見て、病気の進行具合いを診断し、
合併症が発症、または悪化しないよう、
専門的に治療を行っていく必要があるというわけだ。


ようするに、「まかせなさい」というのは、「患者よ、だまって従え」ではなく
「専門的な知識がないダメ医者じゃなくて、専門医にかかったほうがいいよ」
ということ。糖尿病は、かなり奥が深い世界のようだ。