21世紀の歴史
ジャック・アタリの「21世紀の歴史」を読みました。
著者の論旨は次のとおり。
「いかなる時代であろうとも、人類は他のすべての価値観を差し置いて、個人の自由に最大限の価値を見いだしてきた」
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宗教、軍人の支配から抜け出て、政治的な自由を民主主義という形で実現。経済的には、市場と生産的技術の向上で支配層だけのものであった冨をひろく人々に行き渡らせることに成功した。
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しかし、今後21世紀が進行するにつれて、先進国では人口減少、新興国・アフリカなどでは人口の爆発が起こる。そのために、経済的なパワーバランスは大きくかわらざるをえないだろう。
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現在の世界の中心都市は、IT産業が興ったカリフォルニア。しかし、アメリカの繁栄をもたらした構造は、債務超過と株式バブルという大きな矛盾をはらんでおり、いつ破裂してもおかしくない状態にある
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今後の世界は、アメリカという中心を失い、いやがおうにも多極化する。個人は、より自由を求める形で、孤立化する。技術的なツールが整ったことで個人の孤立化に拍車がかかるだろう
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究極の孤立化、市場による適正配分の行き着く先は、国家の弱体化と新たな管理社会の到来であろう。
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国家の統治システム、教育、医療など公的サービスまでもが市場が提供するサービスにとってかわられるかもしれない。その結果、個人を支配するのは、市場による最適な資源の配分、利益の最大化を組織目的とする保険会社かもしれない。
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対外的には、新興国が食料と水資源を求めて、国境を越えることも考えられる。歴史的にはホッブスが過去に警告した万人による闘争状態が全世界を覆うことになるかもしれない。
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そうならないために、人々の政治意識は、個人の自由・冨の追求のみに偏らない新しい段階に進む必要がでてくるだろう。
こんな感じ。かなりはしょって読んだから、ちがうかもしれません。
フランス人のアタリは、アメリカの衰亡を予測していますが、金融巨大バブルの崩壊でアメリカの没落はこの本よりも早かったようです。
「ローマ人の物語」で塩野七生先生が書いていたように、繁栄の要因が次の時代にあっては、没落の原因になるわけです。日本は、世界の中心都市になる潜在能力をもっていたが、自己変革能力と世界史における歴史的な使命感にかけていたゆえに、中心都市になるチャンスを逸したのだとか。まあ日本はそこまで世界史にかかわらなくてもよかったんじゃないか、と思いますが。
ちょっと深く読み込めませんでしたが、気になるのは、世界の動きをとらえるのに、個人の自由の拡大と市場の役割に対して、曇りがない直線的な見方をしている点。もう少し、懐疑的な見方もあっていいんじゃないかと。それともこれからは直線的にスピードをさらにあげて、個人と市場が最適配置をもとめて動きつづけるというイメージをもっているの゛しょうか。
日本の政治を見ていると、どうも懐疑的になるけどね。
- 作者: ジャック・アタリ,林昌宏
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2008/08/30
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