満州国演義


船戸与一先生の満州国演義1-2巻を読みました。


風の払暁―満州国演義〈1〉

風の払暁―満州国演義〈1〉

事変の夜―満州国演義〈2〉

事変の夜―満州国演義〈2〉


船戸先生というと、冒険大河という趣の小説が多いような気がします。


これまで読んだ中で一番面白かったのは、蝦夷地別件でした。読んだのはずいぶん昔だったので詳細はおぼろげですが、アイヌの歴史が絡んでおおがかりな舞台装置だったような気がします。


今回の満州国演義は、そういう意味からすると、いまいち物足りない。小説としてのおもしろさに欠けるのです。小説の構造があまりにもしっかりしていて、登場人物が窮屈そうです。


話は、敷島家の四兄弟が視点でそれぞれ進みます。外交官で奉天総領事館参事官の太郎、日本人でありながら満州馬賊となった次郎、関東軍憲兵隊中尉の三郎、無政府主義運動から挫折してひとりふらふらしている四郎。


この四兄弟がそれぞれの立場で満州国建国に絡んでくるんですが、いかんせん、物語が展開しないんですね。歴史としての満州国を作者が語りたいばかりに、やたら四兄弟に話し好きのサブキャラがうろちょろしてきます。なんか「マンガ満州国の歴史」みたいな構造ですね。


船戸先生は、物語というよりも、この小説では資料などから自分が解釈した歴史の見方を語りたかったんだろうな、と思いました。そういう読み方をしてみれば、満州国の歴史が面白くみることができます。


船戸先生は、歴史は小説家の玩具ではない、という旨を後書きで書いています。だからこの「満州国演義」という小説は、タイトル通り、満州国の歴史の枠組みのなかで、船戸先生が資料などから読み取った解釈を登場人物をして語らせしむるというものなんでしょう。


それにしても、船戸作品をしばらく読まないうちに、ずいぶん作風が変わっていたのでちょっと戸惑いました。