前立腺がんの化学療法


仕事では、医療関係の記事を書くことが多いのです。一般の雑誌に書いているため、話は聞いたけど、けっこう載らない情報も多いのです。とりあえずアップしていこうと思います。


たぶん共同通信の配信だと思いますが、前立腺がんについて、6月中旬にこんな記事が載っていました。

厚労省前立腺がん適応でタキソテールを優先審査品目に指定
 厚生労働省は、サノフィ・アベンティス社(東京都新宿区)の抗がん剤「タキソテール注射剤」(一般名ドセタキセル水和物)を、ホルモン不応性の転移性前立腺がんも追加適応症とするため優先審査品目に指定した。同社は2月に申請していた。


前立腺がんの治療法には大きくわけて、切除手術、放射線療法の二つがあります。しかしすでにがんが、前立腺から周りの組織に浸潤していたり、転移していたりすると、ちょっとやっかいなことになります。その場合、治療は多くはホルモン療法ということになります。前立腺がんは、男性ホルモンの刺激を受けて増殖したりしているので、ホルモンを絶つと増えなくなります。しかし、そのうち男性ホルモンの影響が少ないタイプのがん細胞が増えてくるのです。新聞記事でいうところの「ホルモン不応性」というわけです。


その次の策として出てくるのは、抗がん剤を使った化学療法です。前立腺がんに効果がある抗がん剤は長年見つからず、病状が進んだ前立腺がん患者は苦しめられてきました。


前立腺がんは腰などの骨にも転移するのですが、これがすごく痛いそうです。前立腺がんの骨転移は、骨を造る方向でがん細胞が働くので、骨の周りの神経を圧迫して痛いことになるのだそうです。


というわけで、今回、厚生労働省に保険適用の申請が出されていたタキソテール(一般名ドセタキセル)は期待されています。


欧米の大きな臨床試験では、ドセタキセルと、もう一つの抗がん剤のプレドニゾンを併用した療法は、従来の化学療法と比較して、生存率が上昇したということです。


国内の臨床試験も行われています。ドセタキセルを3週間ごと投与、プレドニゾンほ毎日服用するという処方で、ホルモン療法が効かなくなった進行性の前立腺がん患者に治療をおこなったところ、44.2%の患者に効果があったそうです。


前立腺がんで亡くなる患者はだいたい年間1万人。多くはホルモン療法が効かなくなってからの死ですから、その前にドセタキセル+プレドニゾンの化学療法を行うことで、生存期間の延長が期待できます。だいたい化学療法が行われてから、20か月くらいは生存できるようです。痛いのも改善されるようです。


問題は副作用と治療のタイミング。


副作用は、白血球が減少して感染症にかかりやすくなるために、体が弱っているなど全身状態が悪い患者さんには使えません。


ホルモン療法から化学療法への治療の切り替えのタイミングは「ホルモン療法の薬を投与しても、PSAの上昇が続く」「骨転移による痛みが出てきた」時など、判断は医師によって異なるようです。


厚生労働省が、進行性前立腺がんに対してのドセタキセルの併用療法を優先審査品目としているのだから、保険適用は近いはず。保険適用が間に合わなくても、海外で臨床試験が終わっていて広く使われている国内未承認薬は、追加払いでOKのはずだったような。ともかく、ホルモン療法がきかなくなった前立腺がん患者の選択肢ができたというのはよかったです。これからかもしれませんが。